採用サイトを構築することで採用戦略が明確になり、その結果として応募につながる確率が高まります。
採用がうまくいかない原因は、認知や母集団の不足だけでなく、「求職者が判断するための情報が整理されていないこと」にあります。採用サイトは単なる求人ページではなく、会社として「どんな人を、なぜ採用したいのか」を言語化し、構造化するための装置です。
そのプロセスを通じて、採用コンセプトやターゲット人材、伝えるべきメッセージが整理され、結果として採用活動全体の軸が定まります。また、情報が整理された採用サイトは、求職者にとっての安心感や信頼度を高め、「応募しても大丈夫だ」と判断できる材料になります。
本記事では、採用マーケティングの全体像を「求職者ジャーニーマップ」というフレームワークを用いて整理し、なぜ採用サイトが採用活動の中心に位置づけられるのかを、段階ごとにわかりやすく解説していきます。
採用マーケティングの全体像
採用マーケティングとひとことで言ってもその内容は多岐に渡り、採用コンセプトを考えるという経営レベルで取り組むべきところから、SNSでの発信という採用担当者のレベルで行う施策までさまざまです。
そんな中で重要な考え方は、会社が伝えたいことを伝えるのではなく、求職者が知りたいことを伝える、という視点です。アピールするよりも、求職者が抱く疑問や不安に対して応えていくのが採用マーケティングの本質と言えるでしょう。
つまり、求職者視点で情報発信をしていくことになりますが、そこで役に立つフレームワークが「求職者ジャーニーマップ」の活用です。

「ジャーニー」とは「冒険」を意味しますが、従来のマーケティングでは「カスタマージャーニー」として活用されており、段階ごとの顧客の心情の変化を理解して図表などで可視化することで、変化に合わせて適切な情報を整理できることから、有効活用されています。
採用マーケティングにおいては、集客ではなくて採用になりますが、会社に人を集めるという概念は根本的には変わらないので、カスタマージャーニーを採用に応用されるようになってきました。
求職者目線でみると、会社を知ってから応募・内定に至るまでいくつかの段階があり、その段階ごとに心情が変化していきます。その変化のパターンは「認知」「興味」「比較・検討」「応募」という流れを辿りますが、それぞれの段階ごとに届けるべき適切な情報があります。
例えば、まだ会社の名前を知った段階でいきなり「説明会に来ませんか?」というのは唐突で、多くの場合はいきなり説明会に行こうとするのではなく、公式サイト、採用サイト、SNSなどで情報収集をして、どんな会社なのかを知る段階があります。
このように各段階で起きることを整理して可視化するのが「求職者ジャーニーマップ」であり、この求職者ジャーニーマップを用意することで採用活動、および、採用マーケティングの全体像を把握することができ、「理想の人材を採用する」というゴールから逆算して一つひとつの施策を実施することができるようになります。
「応募」の壁を超えるために採用サイトがある
採用サイトの役割についてはこの後の「採用サイトが欠かせない理由とは」の章で詳しく解説しますが、ここではざっくり概要を掴んでいただきたいと思います。
さて、求職者ジャーニーマップを元にしたときに、企業側の抱える大きな障壁が「応募」と「入社」です。
この2つの障壁のうち、まずは入社の障壁。応募から入社までの選考・フォローの段階ではウェブが担う領域を超えて、社内の採用活動オペレーションが大きく関わります。どちらかというと内部体制の部分ですのでウェブを使ってやりくりできる部分ではないですが、もしかするとこの部分に課題があるかもしれません。
「応募が多いのに採用に至らない」というケースの場合は、この「選考・フォローの段階」の改善に着手してみてください。
もう一つの障壁である「応募」の障壁。多くの中小企業は「応募が来ない」という課題を抱えており、私たちにもご相談いただきます。
求職者ジャーニーマップをご覧いただいてわかるように、この応募の壁を超えるために採用サイトを構築します。

「興味」「比較検討」「応募」をカバーしていますが、ここでの情報発信が不十分だと求職者にとっては「本当にこの会社が自分に合っているのだろうか?」と疑問や不安を払拭できず、応募に踏み切りません。
企業側は「わからないことがあれば質問してくれればいい」と思いがちですが、質問することも心理的な負担がかかるので、簡単に質問や相談をしてくれません。結果、「この会社はいいや」というように離脱につながってしまいます。
採用サイトの役割についてはこの後の「採用サイトが欠かせない理由とは」の章で詳しく解説しています。
求職者ジャーニーマップと各フェーズの役割
認知:「会社の存在を知る」段階
認知フェーズは、求職者がまだ「転職しよう」と明確に決めていない、もしくは「どこか良い会社があれば」という温度感の低い段階です。この時点では、仕事内容や条件よりも前に、「どんな会社なのか」「何をしている会社なのか」という大枠の理解が求められます。
ここで重要なのは、いきなり求人情報を押し出さないことです。求職者にとっては、まだ自分ごとではない状態のため、「募集しています」「説明会に来てください」といったメッセージは届きにくく、むしろ警戒心を生んでしまいます。
認知段階で果たすべき役割は、会社の存在や価値観、考え方に“触れてもらう”こと。SNS、広告、記事コンテンツなどを通じて、会社のスタンスや雰囲気を伝え、「この会社、ちょっと気になる」という入口をつくるフェーズです。
興味:「もっと知りたい」と感じる段階
興味フェーズでは、求職者の意識が「知っている会社」から「調べてみたい会社」へと変化します。ここで求職者が求めているのは、企業側のアピールではなく、「自分に関係がありそうかどうか」を判断するための情報です。
例えば、「どんな事業をしているのか」「どんな人が働いているのか」「どんな価値観を大切にしているのか」といった情報が該当します。この段階で公式サイトや採用サイトを訪れ、会社の全体像を把握しようとします。
興味フェーズで情報が不足していると、「よくわからない会社」という印象のまま次の比較・検討に進めず、静かに離脱してしまいます。採用マーケティングでは、この“調べ始めた瞬間”に、安心して読み進められる情報設計が欠かせません。
比較・検討:「自分に合うか」を見極める段階
比較・検討フェーズでは、求職者は複数の企業を横並びで見ながら、「自分はどこで働くべきか」を真剣に考え始めます。この段階で初めて、仕事内容、働き方、条件、人間関係、評価制度など、より具体的な情報が求められます。
多くの中小企業がつまずくのがこのフェーズです。「そこまで細かく書かなくても大丈夫」「質問してくれれば説明する」という考え方では、求職者の不安を解消できません。なぜなら、質問する前に“候補から外す”という選択肢を持っているからです。
採用サイトは、この比較・検討フェーズにおいて、「ここで働く自分をイメージできるかどうか」を左右する重要な役割を担います。情報を出し切ることが、応募への信頼につながります。
応募:「一歩踏み出す」段階
応募フェーズは、求職者にとって心理的ハードルが最も高い段階です。「本当にこの会社で大丈夫だろうか」「入社して後悔しないだろうか」という不安を抱えながら、最終判断を下します。
この段階で必要なのは、新しい情報ではなく、これまでに得た情報を裏付ける“安心材料”です。採用サイト全体を通して一貫したメッセージが伝わっているか、働くイメージに違和感がないか、疑問が残っていないかが問われます。
応募が来ない原因の多くは、認知不足ではなく、この応募フェーズで不安を払拭しきれていないことにあります。採用サイトは、応募を促すためのツールではなく、「応募しても大丈夫だ」と背中を押すための受け皿なのです。
採用サイトが欠かせない理由とは
では、採用活動において、採用課題を解決するために採用サイトが欠かせない理由は何でしょうか?
求職者は転職活動の情報収集の手段として企業の公式サイトを見る人が非常に多くいます。これは、転職者は「会社の情報が一番詳しく、正式な情報が乗っているのは公式サイト」だという認識があるためですが、求職者ジャーニーマップにおいては「興味」「比較」「検討」のために公式サイトを度々訪れます。
ここで事業の情報などが記載されているコーポレートサイト、あるいは、サービスサイトがあることは、求職者にどんな会社かを伝えるために必須になりますが、加えて求人について詳しく書かれている「採用サイト」があることで、より詳しく会社のことを伝えることができます。
実際には事業のことが詳しく書かれているコーポレートサイトでは、求職者が知りたい情報を届けるのは不十分です。
求職者が知りたいと思っているのは「どんな会社で」「どんな働き方で」「どんな条件で」「どんな人が上司、同僚で」「何を期待されていて」、、、というような、自分がこの会社で働くイメージができるぐらいの具体的な情報です。
そのぐらい具体的な情報を発信するには、公式サイトの一部で求人情報を載せるだけや、求人媒体やプラットフォームの枠では限界があります。業界によっては採用サイトを構築することが当たり前になってきている中で、採用サイトがなく情報が少ないことは「興味」「比較」「検討」の土台に上がらないということ。
つまり、その状態でもし応募が来るとすれば、第一希望、第二希望の内定がもらえず、仕方なく応募するというケースになりがちです。
仮に競合となる他社よりも、実は条件が良く、求める働き方にマッチしている会社だったとしても、発信されていないものを知ることはできませんので、優秀な人材や本来求める人材から応募が来るのは難しくなってしまいます。
SNSよりも採用サイトを優先的に構築する
私たち採用サイトのご提案をしたり、採用マーケティングのご相談、商談の場でよく議題に上がるのが「SNSと採用サイト、どちらを先にやるべきか」というお話。
この議論についても私たちは明確な回答を持っていて、基本的には「採用サイトから先に構築するべき」とお答えしています。

理由は、求職者ジャーニーマップを見たときに、よりゴールに近いところから対策をするのがマーケティングのセオリーとして考えられており、私たちのデータや経験則からもゴールに近いところから対策した方が成果につながりやすいという実感があります。
ゴールというのは「応募」ですが、応募に必要な施策をみると、採用サイトでの発信がそれに該当します。その手前の「検討」「比較」も採用サイトが該当し、「興味」のところで一部SNSや外部のプラットフォームが含まれるようになります。
その流れでみていくと、SNSが一番活躍するのは「認知」段階の対策です。つまり、SNSを頑張って拡散されて認知が広がっても、その後の「興味」から「応募」までの段階が整っていなければ、それはいわば目の粗いざるのようなものなので、せっかく広がった認知や集まってきたアクセスも、溜まることなく流れていってしまいます。
現に、SNSで何十万再生、何百万再生と拡散したのに、応募件数がゼロ、あるいは求める人材にマッチした応募が来なかったという例もあり、当社にもそのようなご相談をいただいたこともあります。
逆に言えば、SNSを一切やっていなくても採用サイトをしっかりと構築することで求める人材から応募してもらうことができます。多くのアクセス数を集めるよりも、一人の求める人物像を取りこぼさないための受け皿作りの方が採用に効果的なのです。
SNSユーザーは転職活動中とは限らない
また、SNSの難しいところは、アプローチできるユーザーが必ずしも転職活動中ではないということ。
一方、求人媒体や転職ポータルサイトを使っているユーザーは、「転職したい」「転職を検討している」というニーズがあって自ら利用しています。
この違いは実はとても大きくて、特に中小企業の場合は、より早期に採用という成果を出したいという企業が多い中で、やはり「転職したい」とニーズが明確な層をターゲットとした方が、やるべき施策の工程を少なくすることができます。
